河合玉堂の絵に魅かれるようになったのも、私が以前より日本贔屓になったせいでしょうか。今回初めて山種美術館を訪ねて玉堂の絵画を観ましたが、いくつか素晴らしいものがありました。
いちばん人気があるのは「早乙女」でしょうか。田植えをする五人の娘が鳥瞰の構図で描かれています。瑞々しい絵です。とても72歳の時に描かれたとは思えないです。私が一番印象に残ったのは「水声雨声」です。背景の上方は雨に濡れた木々、下方へ筧にて水が流れその端に水車が回ります。構図がよいです。私は背景の濡れた木々のぼんやり感がとてもよく思えました。それは輪郭のないのが特徴の没骨描法と言われる技法で描かれていました。とにかく、観ていて湿気を感じるそんな画でした。素晴らしいです。
もうひとつ印象的だったのは「残照」です。山の頂に夕陽の光があたって、山の手前には葉が落ちた木々のシルエット。いかにも一般受けしそうな絵です。ただ、山の稜線が左から右へ若干下っています。木々もそれに倣います。木々の向こうにかすかに見える山道も同様です。その傾き加減は太陽の傾きを表しているかのようです。そんなことを想像してしまうところがこの絵のポイントです。
玉堂の絵の多くには人間が登場します。していないものもあります。比べるとわかりますがやはり絵の中に人がいるほうがより絵が生きるように感じられます。人が自然の中のうまく溶け込んでいるのです。つまり、日々の営みの中の自然の光景が絵になっているのです。そのとらえどころがたまらなく良いのです。
スポンサーサイト
- 2007/11/01(木) 08:57:18|
- アート
-
| トラックバック:1
-
| コメント:0