決定的瞬間のアンリ・カルティエ・ブレッソンである。ロバート・キャパらと写真家集団マグナムを作ったというと、マグナムのなかのひとりだったのという印象になってしまうでしょうか。でも、こういう反応はブレッソンが望むものかもしれません。日本ではキャパの方が知名度はあるでしょう。でも私としてはブレッソンの方が好きです。と言うか、写真家の中ではブレッソン、そして、アーウィットの順。
私は写真というのはシャッターチャンスをいかに捉えるかだと思っていますが、それを体現したのがブレッソンである。彼は呆気にとられてしまうような、タイミングの写真をたくさん残しています。
一昨年95歳で他界したブレッソンのドキュメンタリー映画「瞬間の記憶」が公開されています。映画は自身の作品についてブレッソン自らがそのときの思い出を交え語り進んでいきます。ブレッソン以外の主な出演者は女優のイザベル・ユベールや、作家のアーサー・ミラー、写真家のフェルディナンド・シアナらですが、彼らがブレッソン、そして彼の作品の魅力を語っています。ですから映画自体の面白さを期待しないことです。映画音楽はバッハ、モーツァルト、ラヴェルのピアノソナタだったのですが、これが見事にはまっていました。この映画を作った後、ほど無くブレッソンが亡くなったということを考えるとこれはブレッソンからのファンへの遺言みたいなものとも言えます。
本人は写真を撮られることをとにかく嫌っていました。それは顔が世間に知られると街中で何気なく自然に写真を撮ることが出来なくなるからです。彼の写真の多くはそのようにして撮影されそして、人々の自然な営みの中から、日常の中の決定的瞬間を切り取ってきたのです。
晩年に自らの個展会場に本人がいる映像を見たことがありますが、誰一人としてブレッソンに気づいていませんでした。映画の中ではないのですがブレッソンは
「有名人にさえならなければ、有名になることは悪くはない」とドガ(?)の言葉を引用して話していたことが思い起こされます。
映画は渋谷のライズXで観たのですが、ここは確か以前シアンズBというバーだったはずです。38席と小さいのに1、2階と分かれています。小さいからどの席でも極端に観にくくなる事はないだろうと思ったのですが、その逆でした。元々映画館の作りではないのでかなり無理があります。
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- 2006/06/01(木) 00:28:29|
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