
エミリー・ウングワレーはオーストラリア先住民族アボリジニである。ただ、アボリジニが表現するプリミティヴアートを想像すると彼女の作品はちょっと違いを感じます。
1977年にオーストラリア政府がアボリジニに対して行った教育プログラムでエミリーはまず、ろうけつ染め、そしてアクリル絵具を使うようになりました。このとき既に80歳目前でした。
作品は点描、そして、線による表現のものが多いです。点描もビーズを散らしたような点描、花畑のようなもの、同系色点描のグラデーションといろいろです。
カーメ 夏のアウェリェ、ムーネ・アーテーケ、カーメの3作品が点描では惹かれました。蔓植物の実、その近くにあった無題の作品、これは鉄が錆びたような色合いのものです。エミリーの故郷アルハルクラの土地の色を表したものなのかも知れません。
エミリーは他の画家の作品を恐らくはほぼ見たことがない(?)ので、その影響を受けていないわけです。だからこそ独自の個性を感じます。ただ、それは彼女の画家としての個性というより、アボリジニの世界観であるドリーミングです。エミリーは言います。私が描いているのは全てであると。現代人から見れば殺風景なアルハルクラ、そこにある土、動植物、つまり眼前にあるもの全てを描いているとのこと。
エミリーの作品を観るとすぐに近づきたくなりますが、すぐにそれが間違った見方と気づき離れて再度観ます。絵画には必要以上の緻密さはありません。緻密さがなければ絵画ではないとは言いませんが、私は個人的にはある程度は欲しいです。それでもエミリーの作品は魅力的です。それは絵画として素晴らしいというより、やはり、精神性を強く訴えるところの素晴らしさに心が惹かれるのだと思います。
彼女の作品は現代アートのカテゴリーに属するとのこと。でも彼女が描くのは数万年前からこの地に住んでいたアボリジニの世界観ドリーミングに基づくもの。それが現代アートの括りになるというのが面白いです。確かに技法は現代アートのものなのですけどね。
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- 2008/07/05(土) 18:04:37|
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