ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

画家と庭師とカンパーニュ

画家と庭師
 パリでそれなりに有名になった画家キャンバスは生まれ故郷に戻って絵を描き続けることにします。帰って最初に家の家庭菜園のために庭の手入れを依頼します。庭師のジャルダンが来て依頼主のキャンバスを見て気づいたこと、それは悪戯好きの悪ガキ2人組の片割れの幼なじみだということ。昔はともかく、今の二人の生活は対照的。パリで浮気を重ねるキャンバスは妻から離婚を言い渡されます。自分とさして年齢が変わらない婚約者を連れてきた娘に対して、「結婚は反対」と喧嘩。パリの美人の教え子に新しい恋人ができたと見るやすぐに相手をやりこめて取り返す。かたやジャルダンは故郷に残って国鉄の職員になり定年退職。田舎暮らしのせいか朴とつな性格。夫婦で毎年ニースで休暇を過ごす。どちらかといえば平凡な生活。パリで都会的な洗練を身につけたキャンバスはジャルダンに対して最初は違和感を覚えます。キャンバス最初は畑に水をやるのを忘れてしまうこともしばしばなのですが、きちんと水をやるようにジャルダンに諭されます。草の刈り方やそのための道具はどんなものが適しているか、そして、明日の天気予報など、大人になって初めての田舎暮らしゆえ教えられることばかり。キャンバスがマリファナを勧めると吸うこと自体を否定されたり。そんなことを重ねるとキャンバスに気持ちの変化が現れます。だんだんジャルダンの生活に対する態度、考え方に惹かれていきます。
 数日後、突然ジャルダンが体調不良を訴えるとキャンバスは恩返しのつもりか懇意にしている医者を紹介するために一緒にパリに向かいます。残念ながら病は既に手遅れの状態まで進行していました。二人は最後の思い出に巨大な鯉を釣りに出かけます。釣った後は「これで3度目だな。でもこれで最後だ」ジャルダンはそう言って鯉を放します。その後何日か経過した後ジャルダンの妻からの電話で亡くなったことを知ります。この時すぐに駆けつけるのではなく、キャンバスが最初に行ったことは畑への水やりでした。それはジャルダンが望んだことなのでしょう。

 私にとっての映画はエンターテイメント性より人生とはなんなのかということを考えさせてくれるものに徐々に変わりつつあります。この映画は故郷に帰ることによって主人公が変わる。そんなことを表現しています。それは故郷と幼なじみという要素が大きいでしょう。でも私には人は田舎によって大きく変わるという風にとらえてしまいます。東京などの都会に住む人にとって洗練はあこがれですから、多くの人がなろうとするのはキャンバスでしょう。それと同時に多くの人が都会にない素朴さをもったジャルダンに妙に惹かれるのも事実でしょう。もちろんそんなことは言わなくても分かっていることです。それでもいつまでも考えてしまうのはどちらのスタイルのほうが素敵なのかということ。「正しい」もしくは「人間的」という形容でもよいかもしれません。
 田舎はカッコ悪いと、そこに住む人も住んでいない人も子供のころは少なからず思っていたものです。でも、大人になるにつれてそんな考えが間違っているのではないかと思い始めます。 カッコ悪いなんて、とんでもない。この生き方がカッコいいではないかと。そんな風に思う人は少なくないと思います。もちろん監督のジャン・ベッケルだってそう思っているのだと思います。

 途中お酒を断ったジャルダンにキャンバスがワインを勧めるシーンがありました。ジャルダンは
「お酒は断ったと言ったじゃないか」と断ろうとすると。キャンバスは
「ただのワインじゃない。82年物のアンジュリュスだ」と言います。
去年の007カジノロワイヤルでカジノに向かう列車の食堂車、ボンドとボンドガールのテーブルにもさりげなくこのワインが出てきましたがこの辺を出すところのセンスが映画の質を物語ります。やはり、オーゾンヌでもシュバル・ブランでもだめなんでしょう。別にこの2つのワインがダメなワインと言っているのではないです。つまり、これ見よがしはカッコ悪いということ。ブルゴーニュならロマネ・コンティではなく、ミュジニィかコルトンあたりでしょうか。
スポンサーサイト
  1. 2008/09/02(火) 23:13:26|
  2. 映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<パラレル・ワールドもうひとつの世界 | ホーム | 花火競技会>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mwzelda.blog22.fc2.com/tb.php/369-e48b653a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ハチャ

Author:ハチャ
アーティスティックなものが好きな私です。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する