ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

美味しい料理より忘れ難い料理を(後編)

[前編の続き]
 こんな経験をしたことが良かったのか、悪かったのか私はこんなスタイルの料理を目指すようになったのです。話を最初に戻します。ではなんて言われたいのかと言うことです。表現するのが難しいですがあえてするならば
 「美味しんだけど....」なのです。大切なのは前半の「美味しい」ではなく後半の「....」です。これは人によっては想像だったり、混乱だったりでしょう。
 私が目指した料理スタイルは誰にでも受けるというわけではありません。最も多くの人から「美味しい」を引き出すためにはもっと分かりやすい調味をすれば出来ます。例えば「ナス、トマト、チーズ」こう言うだけで多くの人は「ほお」と思うことでしょう。でもそこには面白みは存在しません。私としては何とか食べ手の後ろ髪を引くことをしたいのです。それは意地悪な性格という見方もできるでしょうが、よく言えば食べ手の想像の楽しみを大切にしたいということです。
 ではいったいどうしたら後ろ髪を引けるのか。私の考える方法論はというと、それは美味しさを忍ばせることです。これは所謂隠し味では決してありません。敢えて言えば主張しない美味しさです。舌に主張するのではなく、食べている時は気付かないように、そしてこっそりと無意識の記憶へ刻み込む美味しさをひそやかに忍ばせる。そんなことができそうな料理のときは隠す計算をします。そして、不発に終わるかも知れませんがタイマーもセットします。このタイマーというのは今までにありそうでなかった味。よくある味にしても、全く新しい味にしてもタイマーはかからないというのが私の考えです。食べたその時に判断されてしまうからです。

 さて先日のピクニックに作ったきびなごのエスカベージュですが、この料理が受けた人がいました。先週末会ったときに
 「野菜が美味しかったんです....」と言われました。この人はピクニックに欠席した奥さんにどう美味しかったのか説明してととがめられたそうです。
 「どう美味しかったのか説明してと言っても答えられないんですよ。ハチャさん」奥さんからそんなこと言われて、わたしもちょっと苦笑してしまいましたし、なんだかちょっと可哀相なことした気がしました。この料理を作るときに意地悪な気があったとしたら天罰を受けたまでです。

 使ったのは玉ねぎと人参とピーマンだけ。これをスライスします。3つの食感を合わせるためにできるだけ薄く、人参はかつら剥きにしてからスライスします。人参は薄くすることが難しいので私の中ではこれが今まであったようでなかったに繋げるポイントです。ここまですると口に入れた時に3種の野菜が舌や口中への刺激が変わらなくなり一体感が出ます。つまり3つの独立した野菜から今までにない1つの野菜にするわけです。次にこの3種を選んだのは彩りのバランスもありますが、それぞれから次の味を引き出したかったからです。玉ねぎからは辛味、人参からは甘味、ピーマンからは苦味。さて、薄いスライスにして、個別の個性を無くしたからこそ、人参の甘味が消え、玉ねぎの辛味が消え、ピーマンの苦味が消え、一つの野菜の甘み、辛味、苦味になる。これがありそうでなかった味です。言い忘れましたが3つの味のバランスをとるためにそれぞれの量を決めることも重要です。
 きびなごはカリッと揚げていますので、食感のとことん優しい野菜がその対照としてバランスを出します。今回の仕掛けはこんなところです。

 こんな手の込んだことして、誰に受けるのでしょうか?殆どは受けないけど、たまには当たります。でもこれは当たって欲しい人に当たるのです。逆に当たらないだろうなという人には殆ど当たらない。別に差別しているわけではないのですが、これも言葉のないひとつの会話なのかも知れません。
 
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  1. 2008/11/13(木) 22:01:56|
  2. 食(その他)
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