ハチャの深層

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チャイコフスキー第5番:ユーリ・テミルカノフ(NHK音楽祭)

 今年のNHK音楽祭はバイオリンがテーマとのことで2人目のソリストは庄司紗矢香。管弦楽はサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(昔のレニングラード・フィル)で指揮はユーリ・テミルカノフ、この人は私初めてです。庄司のバイオリンは生でもTV放送でも何度か聴いていますが、派手さはそれほどなく繊細かつ堅実な演奏です。あまり良くない表現かもしれませんがチャイコフスキーを無難にこなしました。さてこの日の公演プログラムの最後はチャイコフスキーの交響曲第5番です。4番、6番はよく聴きましたがこの5番を聴くのは初めてです。実はこのときも何かをしながら聴いていたのですが、途中から耳だけが引っ張られました。音が違いました。まさか楽器が違うのだろうか。そんな馬鹿なことも考えましたが古楽器を使ってるわけでもないですしそんなことないわけです。よくオーケストラ独自の音色という表現をすることがありますが、恐らくはロシアの楽団の音色なのでしょう。

 以前メニューインが
「完璧なハーモニーとほぼ完璧なハーモニーはどこが違うのでしょうか」そう語った番組を観たことがあります。彼曰く
「それは聴けばすぐにわかります」とのこと。ハーモニーを極限状態まで高めると音が違ってくることを知識ではわかったものの、耳による実体験はまだです。今回それに近いものだったのだろうかと思ったのです。それはいつも聴く音、それより良いという比較のレベルではなく、何で音が違うのだろうという次元の違いがありました。純粋に演奏という意味では圧倒的ではなく普通に思えました。にもかかわらず音が違う。演奏の懸命さやその時の緊張感が伝わって観客が感じることがありますが、今回はそんなものはなく、圧倒的な純度の音だけが、耳、そして全身で感じられました。

 「なんて演奏なんだろう」いえ、正確に言うなら「なんて音なんだろう」です。簡単な言葉ですが、こんな言葉しか出ないほど呆然としてしまったのです。それに、いたずらに強調する形容をするのが失礼なほど上品かつ高貴な音でしたから。
 こんなことがあるんだ。なかば呆然として曲の終わりを待ったのです。観客の多くもそう感じたのか曲が終わると我に帰り圧倒的な賞賛。指揮のユーリ・テミルカノフは最初から最後までずっとクール。「どうしました?これは我々のいつもの普段の音です」というかのように。
 ひとつ思ったのはオーケストラの各パートの楽器がそれぞれ鳴っているというより、オーケストラという楽器が一つ鳴っているような印象を受けました。バランスをうまくとっているのでしょう。

 昔○○が指揮をすると、毎回事件が起こったという表現がされたことがありました。○○というのは主にカルロス・クライバーですが。事件とはいつもとは違う場合において表現される事柄なのです。では今回のユーリ・テミルカノフによる指揮は事件でしょうか。さっき勝手な表現をしましたが、この演奏は事件ではなく、きっとユーリ・テミルカノフによるサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団のいつもの演奏なのでしょう。もちろん、調子の良し悪しだってあるでしょうから、常にこんな演奏ができているとは信じがたいですが。

 なんて演奏でしょう。いえ、なんて音なんだろう。こんな陳腐な表現してもちっとも恥ずかしくはないです。だってこれを聴けたというこそまさに僥倖なのですから。
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  1. 2008/11/21(金) 23:09:48|
  2. 音楽
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