ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

旧交を温める

 週末の夜にジョギングをしているのですが、そのコースに知り合いのイタリアンレストランが入っています。外から厨房の様子が見えるので本人が働いていることの確認もできます。ここ数年は充分に落ち着いた様子です。

でも以前は違いました。
「もしもし、今度Bに移ったんですよ。もし良かったら来てください。場所は原宿で電話番号は......」
「もちろん行くよ。来週の土曜くらいかな。はっきりしたら電話するよ」

 そんなことを何度も繰り返したものです。あと何店舗移るのだろうなんて考えたこともあります。ある店に移った時のことです。たまたま徒歩30分位の場所に私が引っ越したので挨拶に行ったときのことです。メニューはマンボウの腸のグリエ 夏トリュフ添え、鴨のレバーオレンジピール風味のフェットチーネなど相変わらず挑戦的なメニューで美味しく頂いたのです。そして勧められるがままにディジェ食後酒にグラッパを頂きました。

「このグラッパいいでしょ?もう一杯飲んでください。」そう言ってもう一杯たっぷりと注ぎます。
「これ飲まなきゃ帰っちゃだめですよ」
そして帰り際に
「近くに引っ越したのだからもっと頻繁に来なくちゃだめですよ」

 どちらも客扱いしてない言葉です。だからなのでしょう、とても受けたし、嬉しかったです。

その彼から今年の夏に電話があったのです。
「もしもし、今度、本を出したんですよ。よかったら買って下さい」
「ああ、いいよ。で、本の名前は?」

 そんなやり取りをしたあと、共通の知人、そしてインターネットでも結婚したとの情報を得たのです。暫く彼の店には行ってませんでした。でもお祝いに行かないわけにはいきません。お互いのお気に入りのシャンパン(J.S.)を持っていきたかったのですがそのシャンパンは最近高くなりすぎたので、別のものにすることにしました。お金を渋るということではなく、物にはそれに相応しい価格というのがあるというのが私の考えだからです。そして、たぶん彼も。
 夜遅くラストオーダが終わる頃に店に向かいました。すると、彼が店の外、寒空の下で電話で話しています。ここぞと言う時は案外こんなものです。程なく電話が終わりました。

「久しぶり!ご結婚おめでとうございます。お祝い持って来たんだ」
「ああ、どうもわざわざありがとうございます。まあ一杯飲んで行って下さい。」

 店には2組が残っていました。でも暫くするとその2組も帰り、私以外にはお客はいなくなりました。いや、私はお客ではないです。我々はシャンパンで乾杯をしました。それからお互いのことや共通の知人の近況などを話したりしたのです。

 お客がいなくなってシェフ、スタッフの誰もがリラックスする深夜のリストランテはとても素敵な空間でした。

鵜野秀樹


「ジョギングのとき寄ってくださいよ。一杯引っ掛けに」
「ジョギング途中じゃなくて、今度またちゃんと来るから」

 月の明かりは天空から落下し、坂の上からは甲高い音とともに風が吹き降りてきます。そんな帰り道の道中も旧交を温めなおした体のぬくもりが守ってくれました。
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  1. 2005/12/06(火) 22:32:02|
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