ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

長く細々と続いた話(1/3)黒澤明監督作品

ミノチッタ


 それは2年前、我が街にあるフランス文化色の強いバールでのことでした。クリスマス前のせいか街は華やいだ装いの人が多く店の中にも幾人かはそうでした。遅い時間に入りカウンターで一杯だけのつもりで飲んでいると脇にいた女性ふたり組と会話することになったのです。カウンターの客同士は時折自然と話すようになるような、そんな店です。ふたりはそれぞれ白い花のブーケを持っていました。とっても目立ちましたので聞いてみました。

「そのブーケどうされたのですか。おふたりともなんて」
「会社の男の人に頂いたんです」
「クリスマスのお祝いですか?」
「理由を聞いたのですが、特に無かったです。作ってみたからと言ってました。それより、これ胸に挿すときっと似合いますよ。いいでしょ?」

 女はブーケからまだ開ききっていない白い薔薇を一本抜き、私のチャコールグレーの上着胸ポケットに挿したのです。胸ポケットに花を挿すのは好きですがなかなか買うまでいたらないものです。だから悪い気はしませんでした。花のお礼をしたかったのですが、お酒で振舞うのではなく会話の延長ですることにしました。それから3人でフランス映画の話をひとしきりしました。そのあと何故か黒沢明の映画について聞いてみました。そのころ私は黒澤の古い映画を観たいと思っていたからです。きっと彼女達は七人の侍や天国と地獄のような有名なものはあげないのだろうと思ったからです。それはそれまで話したヌーベル・バーグの内容から相手が既に観たであろう作品を勝手に察してくれるであろうという思いもありました。聞かれたほうは「ここで七人の侍なんて言えないわね」というような感じです。するとふたりのうちのひとりが

「どですかでん、がいいですよ。それから、虎の尾を踏む男たち。そうよね」と言い、もうひとりの女に同意を求めたのです。
「そうね」ともうひとり。

2つとも私は未だ観ていませんでした。タイトルを聞いたことすらない。私はほんのちょっとしたゲームをふったのですが、ここは彼女達の勝ちでした。ただ、その勝ちがどのくらいの点差をつけているのかは作品を観るまではわかりませんでした。

その日の深夜我々は一緒に店を出ました。空気は凛として、吐く息は白濁していました。

「私たち姉妹なんです。似てます?」
私はふたりの顔を見比べました。
「ホントですか?似てるかな」

姉妹かどうかは分かりません。ただ、ふたりでタクシーで帰ることを相談し一緒に乗り込んだことからすると同居しているようでした。

「運転手さん、都立大までお願いします」

つづく
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  1. 2005/12/20(火) 00:00:52|
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