ハチャの深層

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ディア・ドクター(西川美和)

 西川美和の長編三作目がディア・ドクター。

 無医村であった村に村長がなんとか一人医者を迎え、2年が経過しました。その後、医者は急に失踪。警察が捜索するうちに実は医師免許を持っていないことが発覚するのです。
 それまでの2年は順調でした。医者は村人たちを良く診て、そして村人たちはこの医者に親しみを持っていました。過度の期待が人間にはプレッシャーとなるのでしょうか、医者は無免許であることを隠すことが耐えられなくなります。2年経過後に若い研修医が来たときに無免許であることを告白しますが、悪い冗談だと相手にされません。

 今回の西川美和の脚本テーマは嘘です。作品で出る主な嘘は無免許であることを隠す医師(笑福亭鶴瓶)、そして、癌であることを子供たちに負担をかけないために潰瘍と偽る村で一人暮らしの女性(八千草薫)。見た目もひとあたりも善良なのに、もしかしたらと「嘘」を感じてしまう。そんな気配を二人ともうまく出していました。

 さて映画では第三者が無免許を知っていたとわかるシーンは一切出てきませんでした。でもそれは鑑賞者が勝手に考えること。失踪事件を担当した刑事は「本物に仕立て上げたのはあんたがた村人たちではないのか」と言っていましたが、まさにその通り。確信はないもののみんなは薄々感じてはいた。でも無免許でもいなくなると村人は困るのでそのままに。

 前作の出来が良すぎたため、今回期待し過ぎた感はありますが、ストーリーはなかなか良く出来ていました。ただ、ストーリーによる落ちは今回もなく、演技による落ちがあるのみでした。これは西川流ですね。
 私にとって鶴瓶はお笑いのイメージが強すぎて、どうも説得力に欠ける印象でした。きらりと光る演技を見せたのは、井川遙、あとは余貴美子、八千草薫でした。刑事役の松重豊はもっとなんとかなったように思うのですが。

 私は皆さんが思っているほど才能があるわけではない。そんなことをNHKの番組で西川美和が語っていました。もしかしたら、この人が描ける、もしくは描きたいのは人間の感情の振れのようなものなのかも知れないと映画を観た後思ったのです。
 子供の頃から洞察力に優れ、幼稚園時代に既に先生から大人びた感じがあると言われていた千里眼少女。学生時代は周りの人をよく笑わせていたことから、箭内道彦が言ったのは「日本のモンティ・パイソンとか...」、そうなれたら凄いと思う。西川は映画でのコメディーは一番難しいと言っていたが、西川がやるとしたら他でもないモンティ・パイソンのコメディー感覚だと私も思う。

 見た夢を元に一気に書き上げたのが「ゆれる」だが、そのとき書いている最中の脚本があると語っていました。でも、今回のインタビューで「ゆれる」の後は在庫ゼロの状態だったと。書きかけの脚本はお蔵入りなのでしょうか。
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  1. 2009/07/11(土) 22:34:41|
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