ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

映画「オーケストラ」(Le Concert)

 この映画を上映しているやや小さめの映画館はかなり盛況のようで、上映スケジュールを延ばして対応しているようです。¥1000で鑑賞できるサービスデーはどの回も満席という人気ぶりです。
 日本語タイトルは「オーケストラ」ですが原題を忠実に訳すと「協奏曲」です。それはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のことです。そう言えば先週末の芸術劇場での最初の演目でしたが、演奏が割と淡白だったので眠ってしまいました。曲は難曲ではありますが完成度が高く、華やかさに満ちた曲ですので演奏者は気合が入るのが一般的で映画の中でも特別な曲として扱われています。原題に忠実に訳しなかったのは他にこの言葉を使った映画作品があったのか、それとも日本人のクラシックへの意識レベルを考えてのことなのでしょうか。多分、映画を素直にあらわしているのは日本語タイトルで、フランス人の直接的ではない感覚からすると原題なのでしょう。まあ、日本人監督が作ってもちょっとひねったタイトルをつける場合があるわけですからフランスだからというのは正確ではないかもしれません。しかしながら原題に忠実でない日本語タイトルというのは見終わった後「そういうわけであのタイトルなのか」という楽しみを奪うようでいつも残念に思います。配給会社としては「観終わった後」より「観てもらうため」、興行優先なのはしかたがないのでしょう。
【ストーリ】
 旧ソ連の指導部を批判した主人公アンドレイは指揮者を解任され、なんと掃除係になりそれから30年経過。彼が誰もいない楽団責任者の部屋を掃除していたらパリから楽団に公演のオファーのFAXが入ります。そのときアンドレイは30年に及ぶ悔しさを晴らすべくあることを思いつきます。それは当時指揮していた時の楽団員に声を掛けて、ニセの楽団を編成しパリに乗り込むこと。30年前に指導部を非難したことで演奏会を中断させられたときの演目がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。それはそのときのソリストと今度の公演で招くソリストを結ぶ曲なのです。

 映画はコメディータッチな部分を随所に入れつつもシリアスな作りです。ストーリーの展開の仕方はとてもよかったと思います。但し説得力と言うところからすると結構無理を感じました。当時の楽団員は集まらず(たぶん)いろんな人を寄せ集めたり。楽団員はパリについても練習に集まらず、亡命を画策したり小遣い稼ぎをしたり。楽器はパリで調達、本番前日に会場に到着。ソリストとのリハーサルも無し。ソリストどころかそもそも本番までに練習が一切無いのです。それでもこのコンチェルトの力なのか奇跡が起こって素晴らしい演奏になります。そこは映画ですからと納得できる人、出来ない人がいるでしょう。映画館に掲示してあった監督のインタビュー記事で最後のシーンは無理があるのでは?との質問に「奇跡は起こりえると信じます」と答えていました。最上のクラシック音楽を奏でることはどれだけ大変な作業かを知る人にとっては理解しがたい設定だということが、私以外にも思っている人がいたということを確認できちょっとほっとしました。現実には全くありえないのですが、これは「奇跡」なのですからやっぱり「有り」なのでしょう。
 そう言えばストーリーはエフゲーニ・スヴェトラーノフの身に起こったことを元にしたと、たしか新聞のコラム欄に書いてあったのですが、監督のインタビューでは「香港でニセ楽団の公演事件があったことは事実だが、それ以外は私の創作」という発言と食い違います。なんだか胡散臭さがぬけません。

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  1. 2010/05/18(火) 21:28:08|
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『オーケストラ!』お薦め映画

「究極のハーモニーは技術ではない。魂だ!」コメディから一転、ラストでは感動作品へ。笑って泣いて元気をもらえるお薦め作品。
  1. 2010/05/22(土) 13:03:38 |
  2. 心をこめて作曲します♪

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