ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

きことわ(朝吹真理子)

文芸春秋きことわ
 いつからか文藝春秋に芥川賞受賞の作品が載るようになりました。毎回ではないのですが気になるものがあるときは購入し読みます。今回気になったのは「きことわ」です。

 去年、映画「めぐりあう時間たち」を観ました。かなりよく出来た映画でした。ダロウェイ夫人役のメリル・ストリープとヴァージニア・ウルフ役のニコール・キッドマンがすこぶる良かったのです。ヴァージニア・ウルフは小説「ダロウェイ夫人」の作者。つまり異なる世界を一つの映画で描いているわけで、ウルフの晩年と小説「ダロウェイ夫人」のストーリーが並行して進みます。だから当時と現在が「めぐりあう時間たち」なのです。現実と小説内の2つの時間経過の進め方が絶妙でした。もちろん2つともストーリーが良いし、絡め方がまた良い。最近私は時間について考えることが多いので特に印象的な映画でした。その後、小説「ダロウェイ夫人」を読みました。しかし、「めぐりあう時間たち」はまだ読んでいません。その代わり「きことわ」になりました。つまり「きことわ」を読んで「めぐりあう時間たち」を思い出したのです。
 この小説はまだ幼かった「貴子」と「永遠子」が過ごした夏の別荘での出来事と、その後25年を経過し別荘を売ることになり再び出会うことになる現在が上手く織り交ぜられて描かれています。まず当時のこと、そして現在が描かれます。そして、現在から当時を時々回想するさまは「当時と現在」というジグゾーパズルの断片を合わせるのを試しているかのようです。ストーリーに埋め込まれたキーワード、そして意味ありげな、もしかしたら私が気づいていないだけのキーワードが散りばめられています。でもそのキーワードはちょっとやり過ぎではないかという感じもします。「めぐりあう時間たち」は時間の経過を上手く使っていましたが、「きことわ」は時間の経過とは何だろうという作者の思いが強く出ています。それは時間というとらえどころの無いものですからはっきりした表現にはなりえず、霞がかかるような印象の表現です。それは輪郭線の無い印象派の絵画を鑑賞した後の読後感と言えばよいでしょうか。
 作者はまだ現役大学院生です。小説としては基本的に完成の域に達しています。だからこそ描写の強弱の「加減」の悪さを感じます。攻めてばかりで時折疲れることがありました。それでも凄いです。全く作者の才能にあきれるばかりです。
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  1. 2011/03/17(木) 21:45:11|
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