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創作小噺「見当違い」 (日本とアメリカの笑いについて)

 日本で放送されているアメリカのコメディ番組を観たり、日本のテレビに出演しているアメリカ人タレントを見ると日本の笑いとはちょっと違うなあと感じることがあります。その違いを表現するのは難しいですが、日本の笑いはアメリカほど直線的、直接的ではない気がします。今でこそアメリカの笑いはテレビ、映画などで日本に入ってきますが、昔はそれもありませんでした。きっと昔の方が日本とアメリカの笑いの差が大きかったことでしょう。その理由は文化の違いなのでしょうが、あえてあげるとすれば日本の落語に対してアメリカのジョークがあるように思います。
 アメリカは多人種、多宗教の国です。だから人と話す話題には気をつけなければいけないわけです。例えばドイツ系アメリカ人がユダヤ系アメリカ人に対してホロコーストの話を始めたとしたら取っ組み合いの喧嘩になりかねません。初対面同士、どんな相手でもある程度話が通じ、そして打ち解けるのがジョークです。ジョークの文化は少なくともアメリカでは必要から生まれたものです。
 それに対し日本の落語ですが、これは話の内容ももちろんですがその語り口が重要視されます。もちろん落語家というプロが行うのもあるでしょうが、やはり一般の日本人も影響されていると言えると思います。ジョークは結論までが短いのに対して落語は長いです。これも国民性の違いに影響を与えているように思います。

 さてこれからするのは私の知人の話です。武道全般に造詣が深い知人がいるのですが、彼には剣道を時折するアメリカ人がいたそうです。彼の名前を仮にケントとします。ケントは外資系の会社に勤めていました。本国で採用されたのですが日本へ転勤になったとのことでした。日本に住んですっかり日本が気に入ってしまい、日本文化にも興味を持つようになり落語を研究し剣道をするようになりました。ケントは明るいアメリカ人でよくジョークを言うのですが、知人の方はいつも軽く受け流していました。ケントは剣道の相手をしてもらうのは感謝していましたが、ジョークを受け流されるのがちょっと不満だったそうです。2人は月に何度か道場に通って剣道の練習をしていたそうです。
 ところでケントの剣道の構えですがちょっと変わっていました。一般的な構えは竹刀を相手の胸に向ける中段の構えで、攻撃する時には竹刀を振り被るわけです。ケントの構えは最初から竹刀を振り被ったままの上段の構えでした。攻撃するたびに振り被らなくて良い上段の構えはアメリカ人のケントにとって合理的に思えたらしいのです。ただ、この構えは実際はかなり強い人しかしません。振り被ったままだと胴が空いていいて無防備だからです。ケントは稽古をつけてもらう身ですから当たり前なのですが殆ど知人に負けていたそうです。

 さて先月2人は小さな剣道の大会に出場することになりました。1回戦をともに勝ち抜いたのですが抽選で運悪く2回戦で対戦することになったそうです。さてその2回戦の試合ですがいつもの道場の練習とは違っていました。試合開始後ケントはいつものように竹刀を振り被り上段の構えをしたのですが、その竹刀をおもむろに降ろして中段の構えを取ったのです。対戦相手の知人はビックリしてケントが何か企んでいると思ったそうです。知人は面の向こうのケントの表情を読み取ろうとしました。しかし、読み取る間もなく、ケントに小手を決められ1本取られました。いつも上段の構えのケントは小手を狙うことが無かっただけに知人は不意を突かれたのです。知人は先に1本取られ少し動揺しました。上段の構えは竹刀を振り被っているので胴ががら空きなので、ケントにはよく胴を決めていたのですが今日は中段の構えですからそうも行きません。どうしようか、そんな邪念が入ってしまい、気を取られているうちにケントに面を決められて負けてしまったのです。練習でもあまり負けない知人でしたが今日はケントにしてやられてしまったのです。

 3回戦に進んだケントですが中段の構えという知人に対しての奇策が通用しない相手でしたから、あっけなく負けてしまいました。それを見届けた知人は引き上げてきたケントに声をかけました。
「ケント、おつかれ様。俺に勝った勢いのまま勝ち進んで欲しかったんだが残念だよ。それにしても、今日はどうしていつもと違う中段の構えをしたんだ?」
 すると、ケントはこう言ったそうです。
「いや、なんというか俺はずっと見当違いをしていることに昨日の夜にふと気づいたんだ。お前にはいつもジョークを言っているがさっぱり通じない。だからジョーダンも通じないんだと。」

「ケント、お前さん落語の研究が進んでいるようだな。」
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  1. 2011/10/01(土) 00:22:12|
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