ハチャの深層

ハチャ独自の視点で ワイン、食、音楽、アート等を レビュ 。 

創作小噺「幸運の上着」

 自宅から最寄の地下鉄の駅まで歩くと、途中に神社があります。町の名前がついている神社で、それなりに古い神社です。そういうところには決まって大きな木があるものです。境内の外なのですがそういう木を伐ったりすると罰が当たると誰もが思うからではないでしょうか。大きな木というのは一朝一夕に出来るものではないですから時間の経過を感じられて良いものです。太い幹に拡がる枝葉。ただ、大きな木というのは安定するのか鳥が多く留まっているようで、その下には糞が所々落ちています。もちろん歩く時はそれを避けます。それで鳥の糞は避けられると思いきやどうしたものか数年に1回程度は何処で受け取ったのか肩や腕に鳥の糞が付いています。スーツを着ている時などはがっかりです。そういう時は潔く諦めるのが肝心なようで触らずにクリーニングに出すと綺麗に取れるようです。
 それにしても数年に1回とは言っても運悪く鳥の糞が付くのは私だけなのかという疑問があったのです。こういうことを人に聞くことはないのですが、やはり私だけではありませんでした。実は先週友人が「鳥の糞が背中に付いた」と話していました。歩いていれば背中に付くことはなさそうですので、立ち止まってお辞儀でもしていたのでしょうか。その日は「お前も付いたか?俺も時々付いてしまうよ」なんて笑いながら彼と話しました。その友人ですが、鳥の糞の翌日にも会ったのですが、その時に面白いことを話していました。昔の漫画の話です。

「昔の漫画だが本宮ひろしの「俺の空」というのがあるの知ってるか。」
「読んだことないなあ」
「ちょっと話は長いのだけど、まあ聞いてくれ。主人公は安田一平と言って安田財閥の御曹司なんだ。高校3年の早い段階で学校を修了し、東大の受験まで将来の嫁さん候補を探しに行くんだ。」
「何処に?」
「それこそ木の枝を投げて向いた方向でどこでもだ。例えば北海道とか。まあ、嫁さん探しというのは単なる動機付けで、ようは人生経験をさせるというものなんだ。安田財閥の帝王学のひとつなのだろう。それでいろいろあってアメリカのラスベガスにも行くんだ。」
「話がでかいな」
「財閥の御曹司だからスケールは大きい。それで最初は遊びのつもりでギャンブルをやっていたのだけど、妙齢のちょっとみすぼらしい現地の女性に声を掛けられ、一緒にギャンブルをしてくれと頼まれるんだ。」
「色仕掛けにしては、みすぼらしいというが妙だが。」
「これには理由があるのだが、それはまた後で話す。ギャンブルはブラックジャックだ。ルールは配られた手札の合計が21を超えないように21に近くするというやつだ。まあ最初は勝ったり負けたりしていたんだ。それで勝ちが結構続くとカジノも強いディーラーを投入してき、それで負けが続いたりの一進一退なんだ。」
「勝ち負けは運だけではないくやはり確率の世界なんだな。やはりブラックジャックだとディーラーの腕が大きいということか。ディーラーも毎日やっていれば慣れてきて強くなるのか。」
「もちろんそう簡単にディーラーには勝てない。話を戻すが、二人は翌日から正装したんだ。もちろんみすぼらしかった女は誰もが振り向くほど美しくなった。そうして勝負を数日間続けたんだ。すると周りの客の噂になって、その勝負の周りを囲むように人だかりができていったんだ。そこで客の誰かが思いだしたんだな。安田一平の隣の女性はカジノの前オーナーの娘だということを。」
「もしかして今のオーナーに乗っ取られたということか。」
「そういうことだ。父親の恨みを晴らすためなんだ。安田一平を選んだのは占い師の導きということなんだ。それで話を戻すが、カジノも見物人が出始めると商売に支障をきたす。それに同情も入るからよけいやりにくくなる。強力なディーラーを投入しさっさと一平に散財させることにしたんだ。当然のこと一平は負け続けるのだが、負けても負けても湯水のように賭けてくるんだ。一平の銀行口座の残高なんだが、ある一定以上減ると直ちに埋め合わされるということなんだ。」
「さすが財閥の御曹司だな。」
「一平は負け続けてばかりではなく、徐々にコツを掴んだのかディーラーを負かしてもきたんだ。客たちは自分たちの賭け事よりそっちの勝負のほうが面白くなる始末なんだ。カジノの資金が尽きるまで続ける勢いの一平に対して、結局カジノ側からキリが無いから1回の勝負で決めましょうと提案するんだ。もちろん一平が勝てばカジノを明け渡すというわけだ。それで一番強いディーラー、ようは今のオーナーが出てきてひと勝負するんだ。」
「一回で勝負を決めるのはカジノ側にリスクがありすぎな気もするが、まあいいだろう。」

「いよいよ最後の勝負だ。一平の手札は表向きの1枚がスペードのジャック。ディーラーは小さい数字だった。一平がスタンドつまりこれ以上札は必要ないと宣言したので、ディーラーは2枚とも表にしたのだがこれが2枚合わせた合計数は少なかったので1枚引かざるを得なかったんだ。それでもう1枚引くと合計で17。もう1枚引くと21を超える可能性は高いが17で勝てる可能性は低いのでもう一枚引くんだ。周りのお客も固唾を呑む瞬間だが、すると「4」が出て合計で21。ルール上、合計が同じなら親が勝ちで勝負あった場面なんだ。しかし、一平は顔色も変えず微動だにしないんだ。周りの見物客もどよめいたわけだ。結局ディーラーが痺れを切らして一平の裏になっているカードを表にすると、それがスペードのエースなんだ。スペードのエースとスペードのジャックのブラックジャックがこの一大番に出るなんて出来すぎな気もするが。」
「話はなかなか面白かった。乗っ取られた父の敵討ちの娘と財閥の御曹司のペアで大勝負というところか」
「まだ続きはあるんだ。」
「カジノはその娘のものだろ?」
「そっちじゃない。俺の話なんだ。昨日似たようなことがあったんだ。」
「おいおいお前。カジノにでも行ったのか。」
「そう行ったんだ。今横浜に外国の客船が入港してるんだが、カジノ目当てに潜り込んだんだ。」
「昨日の昼に会った後、横浜に行ったんだな。」
「そういうことだ。それでカジノでブラックジャックをやったんだが傍らにいた妙齢の女と一緒にすることになって、それから連戦戦勝なんだ。」
「凄いじゃないか。どれくらい勝ったんだ。」
「そう慌てるな。それで昨日の勝ちに気をよくして、今日もその女と待ち合わせて続きをしたんだ。」
「もちろん今日も勝ったんだろう?」
「いやそれが今日はさっぱりだめだったんだ。」
「カジノに強いディーラーをあてがわれたのか。」
「いや、ディーラーは同じだったんだ。それにゲンを担いで出来るだけ昨日と同じにしたんだ。途中で取った食事も同じサンドイッチにしたくらいだ。もちろん下着やシャツは着替えたが。とにかく現実は漫画のようにはいかないということだ。話が長くなってすまない。」
「そんな、別にいいってことよ。そう言えば昨日着ていたツイードの上着は今日着てないな。」
「ああ、そうだジャケットも替えたな。お前のアドバイスで。」
「確かに触らずにクリーニングに出すようアドバイスした。それでお前は一緒にウンも落としたんだな。」
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  1. 2012/01/02(月) 10:44:19|
  2. 創作小噺
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